孝子(こうし)物語-親孝行のむかし話-

2013年1月21日

 むかし、この美濃(みの)の国に、貧しいけれど親をうやまい大切にしている樵(きこり)が住んでいました。

 毎日山に登り薪(たきぎ)を取ってそれを売り、年老いた父を養っていましたが、その日の暮らしに追われて老父の好む酒を十分に買うことができませんでした。
 ある日、いつもよりずっと山奥に登りました。谷深くの岩壁から流れ落ちる水をながめ「あぁ、あの水が酒であったらなあ」と老父の喜ぶ顔を思い浮かべたとき、苔(こけ)むした岩から滑り落ちてしまいました。しばらく気を失っていましたが、ふと気づくとどこからか酒の香りがただよってくるのです。不思議に思ってあたりを見まわすと、岩間の泉から山吹色の水が湧き出ているのです。これはどうしたことだろうとすくってなめてみると、かぐわしい酒の味がするのです。夢かと思いましたが、「有難(ありがた)や天より授かったこの酒」と腰にさげているひょうたんに汲んで帰り老父に飲ませたところ、半信半疑であった老父は一口飲んで驚き、二口飲んでは手をたたいて喜び、父と子のなごやかな笑い声が村中に広がりました。老父はこの不思議な水を飲んだので白い髪は黒くなり、顔の皺(しわ)もなくなり、すっかり若々しくなりました。

 この不思議な水の出来事が、やがて都に伝えられると、奈良の都の元正(げんしょう)天皇は「これは親孝行の心が天地の神々に通じてお誉めになったものでありましょう」とおおせになり、さっそくこの地に行幸(ぎょうこう)になり、ご自身飲欲せられて、「わたしの膚(はだ)は滑らかになり、痛む所を洗ったらすっかり治りました。めでたい出来事です、老を養う若変(わかがえ)り水です」と年号を養老と改められ、80才以上の老人に授階(じゅかい)や恩賜(おんちょう)があり、孝子(こうし)や節婦(せっぷ)を表彰され、この地方の人々の税を免除なされました。
古今著聞集(ここんちょもんじゅう)より訳文

 

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孝子(こうし)イメージ図

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